
地球温暖化って本当に起きているの?
1 地球はどんどん温かくなっているの?
1 地球はどんどん温かくなっているの?
質問:地球温暖化って地球が温かくなることでしょう?本当に起きてることなのかな?
C.Navi君:本当の話みたいですよ。WMO(世界気象機関)は、2023年の世界の平均気温は、観測史上、もっとも高かったと発表しました。2024年もまた異常な暑さで、日本の夏というより熱帯にちかい気象条件になりましたね。
質問:昔と比べて、どうなんだろう?温度はだんだんとあがって来たの?
C.Navi君:そこがびっくりなんです。グラフを見てください。今から180年くらい前、産業革命後の19世紀後半(1850-1900)を基準=0とすると、現在(2011-2020)はそれより約1.09℃上昇しています。これは過去2000年間、地球が経験したことのない急激な上昇です。
1850~1900年を基準とした世界平均気温の変化

[IPCC第6次評価報告書WG1 TS暫定訳(文部科学省及び気象庁)を基に作成]
ものしり博士:急激な温度上昇の結果、地球上では大気、海洋、雪氷、陸域において、広範囲かつ急速な変化が現れている。その影響は計り知れないとして、気温上昇を1.5℃までに抑えるという地球温暖化対策の国際的な枠組パリ協定が発効されたのが2016年であった。

2 温暖化は世界中どこでも起こっていることなの?
2 温暖化は世界中どこでも起こっていることなの?
質問:世界中で気温は上がっているの?東京とか都会だけではないの?
C.Navi君:世界中のいろいろな観測地点で温度を測っていて、「気温上昇分布図」を見ると、陸や海上、都市部から自然の多い国までどこでも、世界中のほとんどの地域で気温が上がっていることが分かりますね。
気温上昇の分布図(世界各地の平年気温との差)

世界各地で平年より高く、東アジアから東南アジア、中央アジアから北アフリカ北部、北米北部、北米東部から南部、南米中部などで平年よりかなり高かった。[出典:気象庁 気候変動監視レポート2023]
質問:でも昔の気温なんてわからないよね?
ものしり博士:古い昔までさかのぼって、地球の気温を調べる確かな方法がある。南極や北極の氷床から円筒状の氷の柱を切り出して、その酸素同位体比※を順番に調べる方法。動植物の化石の中に含まれている構造を調べたり、含まれている炭酸カルシウムの酸素同位体比を測定して過去の海水温を推定することもできる。
※酸素同位体比…同じ原子番号を持ち、中性子数が異なる原子を同位体と言い、その存在の比率が、さまざまな分析に使われる。
3 日本で真夏日って、実際どれくらい増えているの?
3 日本で真夏日って、実際どれくらい増えているの?
質問:日本には季節があるよね?猛暑日ってどれくらい増えてるの?寒い冬もあるよね?
C.Navi君:環境省が公開しているグラフでは、1910-2019年の期間の、日本の真夏日、猛暑日、熱帯夜、冬日の年間日数の変化を見ることができます。真夏日とは「最高気温が30℃以上の日」、猛暑日は「最高気温が35℃以上の日」、熱帯夜は「最低気温が25℃以上の日」のこと。冬日は「最低気温が0℃未満の日」です。
ものしり博士:このグラフは、都市化の影響が比較的小さいとみられる気象庁の13観測地点の観測値を用いて解析されたもの。真夏日、猛暑日、熱帯夜はどれも増加していて、冬日は減少している。
真夏日、猛暑日、冬日、熱帯夜の年間日数の経年変化
(1910~2019年)

質問:ボクは「春」が大好き!公園の桜の花はどうなるんだろう?
C.Navi君:私は「秋」が好きなんですが。気象庁の監視レポートでは、桜の開花日は早くなって、紅葉は遅くなる傾向にあるようです。経年変化を見ると、温暖化の影響を受けているみたいですね。
さくらの開花日とかえでの紅葉日の変化

4 地球温暖化が起こると何が困るの?
4 地球温暖化が起こると何が困るの?
質問:桜の花を見るのが少しくらい遅くなっても、それほど困らないよね?地球温暖化が起こると何が大変なの?
C.Navi君:海面が上昇しているのは知っていますか?南極・北極や氷河の氷が解けたり、海水温が高くなると海水の体積が膨らんで海面を押し上げるそうです。人工衛星の観測データでは、地球の平均海面は1993年から2022年までの約30年間で9.1センチも上昇していると報告されています。
ものしり博士:平均海面は、このままだと2100年までに最大60cm~1mの海面上昇が見込まれている。沈んでしまう土地や国にとっては、困るどころの話ではないが、日本の砂浜も2100年には9割以上が失われる可能性も予測されている。
C.Navi君:ほかにも、豪雨にいつも見舞われたり、強大な台風がやって来たり、熱中症などの健康被害や、みんなの身近なところで心配がふえることはまちがいないみたいです。グラフは、厚生労働省の熱中症死亡者数の年次推移ですが、赤ちゃんやお年寄りにとっては、怖いくらいの数字ですね。
ものしり博士:もっとそれ以上に生活に影響してくることが沢山考えられるし、今でも危険と直面していることは多い。大型台風の直撃や大線状降水帯の頻繁な発生による災害激甚化、農業・水産業への悪影響(品質低下や漁獲量減少など)、食糧不足、干ばつ・水不足、生態系への悪影響(陸では高山植物の衰退、海ではサンゴの白化など生物生息域の消失など)、感染症拡大、森林火災等々、枚挙にいとまがなく、また重大化する傾向にある。


熱中症死亡者数推移

旬の食べ物コラム●秋の味覚のサンマの収穫量が心配
旬の食べ物コラム●秋の味覚のサンマの収穫量が心配
ものしり博士:地球表面の7割の面積を占める海。温暖化によって海水温が上昇し、海の水は一度温まると冷めにくいという性質もあり、海の生き物は大きな影響を受けている。陸上では約60% の生物種が温暖化の影響を受けるのに対し、海洋ではより多い約90%が影響を受けるという。現在、温暖化に伴う海洋生物の分布域の変化が世界中で確認されており、海水温の上昇が世界全体の漁獲可能量を減少させた要因の一つと指摘されていて、旬の味覚サンマも例に漏れず、親潮の流れが変わったことで漁場が縮小し、漁獲量は1990年頃と比べて10分の1に減少。養殖産業でも高水温が原因でホタテやカキが死んでしまうなど、大きな影響が出ている。
さんまの水揚げ量の推移

5 温暖化で感染症?コロナじゃないよね?
5 温暖化で感染症?コロナじゃないよね?
質問:この間まで、コロナで大変だったけど、温暖化で感染症が増えるってどういうこと?
C.Navi君:蚊やダニ等を宿主とするウィルスによる感染症(デング熱など)や、水中の細菌の増加による水系感染症(コレラや腸チフスなど)の増加が予想されています。新聞でも紹介されましたが、日本ではデング熱を媒介する蚊(ヒトスジシマカ)の生息域が2016年に青森県まで拡大していることが確認され、2019年9月にはデング熱を発症した国内の感染例が報告されました。
ものしり博士:例えばコレラ菌は水中のプランクトンと共生して生息しているので、海水温が上昇するとプランクトンが増殖し、コレラ菌も増えることが予想される(南米では、1990 年までコレラの集団発生はみられなかったが、エルニーニョ現象によって海水温が上昇した年には、多数のコレラ患者が発生した)。

6 温暖化でぼくたちの毎日はどうなっていくんだろう?
6 温暖化でぼくたちの毎日はどうなっていくんだろう?
質問:ボクが大きくなって、次の子どもたちや、またその次の子どもたちの時代まで、温暖化が進むとどうなるんだろう?
C.Navi君:やっぱり異常な自然現象やそれにともなう様々な困ったことが起きてくるみたいですよ。このまま対策を講じていかないと、これまで平均して10年に1回発生するような極端な事態の起きる回数が増えたり、それも強力になったりして、大きな被害に発展するという報告もあります。
ものしり博士:日本に絞ってみても、2100年にどうなるかのシナリオは、国際機関はじめ、いろいろな所から発表されている。わかりやすいところでは、環境省や気象庁が示す、日本の猛暑日の日数が21世紀末にどうなるかという予測を見ると、このまま温暖化が進むと全国各地で2倍、3倍と非常に暑い日が増えていく。その頃のお年寄りや赤ちゃんのことを考えると、何をすれば良いのか?なんとか対策を考え実行する時期が迫っている。
21世紀末の日本の猛暑日の日数予測

大雨、台風で起こる災害のリスク
