
どうして地球が温暖化するの?
1 温暖化って、そもそもどうして起こるの?
1 温暖化って、そもそもどうして起こるの?
質問:地球は太陽のおかげで温かくて暮らしやすいんじゃないの?
C.Navi君:そうなんです、地球は太陽からの光エネルギーによって温められています。温まった地球は、赤外線によって熱を放出します。その時、地球を覆っている二酸化炭素などの温室効果ガスが、地表から出ていこうとする赤外線の一部を吸収し、再び地球の表面へ戻します。ですからもし温室効果ガスが全く存在しなかったら、地表の温度は−19℃になるそうです。
質問:へぇー⁉ なら、温室効果ガスが無いと凍えてしまうね。
ものしり博士:地球の平均気温は、1万年前縄文時代の頃からずっと14℃くらいを保ってきた。現代は、温室効果ガスが増えたため、赤外線がよりたくさん吸収されていることが、地球の温度が高くなっている原因と考えられているんだよ。
地球の温室効果

2 温室効果ガスってどんなものなの?
2 温室効果ガスってどんなものなの?
質問:温室効果ガスって空気の中にあるの?
C.Navi君:地球の表面をぐるっとおおっている大気の中には酸素や窒素があって、目に見えない気体ですが、その中で温室効果のある気体は、二酸化炭素(CO2)、一酸化二窒素、メタン(CH4)、フロン類などがあります。なかでもCO2は大気中の約0.04%とわずかですが、もっとも地球温暖化への影響度が大きいガスと言われています。
日本における温室効果ガスの割合(2022年度)

質問:大気の温度が上がるのは、CO2と関係があるんだね?
C.Navi君:大気は、さっきも話した通り、太陽から地上に到達した熱の一部をつかまえて吸収し、一部を宇宙に逃がす大切な役割を果たしています。ところが、CO2の量がどんどん増えてきて、地球の大気に蓄えられる熱の割合が大きくなったので、バランスが崩れてしまったんですね。
質問:温室効果ガスは、太陽の光は通すのに、地球からの熱は吸収するの?
ものしり博士:光の「波長」について考えよう。温室効果ガスは、太陽の放射エネルギーのような波長の短い光は吸収しないが、地表から宇宙への放射エネルギーのような波長の長い赤外線(0.78μm~1mm)を吸収する性質をもっている。図によれば、大気(温室効果ガス)によって吸収された赤外線(熱)は、「雲・大気からの放射」で、地表に戻ってくるというわけ。そもそも〈電磁波の波長〉の図の通り、目に見える光(可視光線)では、「紫」が一番短く、「赤」が長い波長を示していて、赤外線は、赤色の外にあるから、赤外線と呼ばれているんだよ。
太陽光の放射エネルギーと地球から宇宙への放射エネルギー

電磁波の波長

3 温室効果ガスはどれくらい増えているの?
3 温室効果ガスはどれくらい増えているの?
質問:気温の上昇はわかったけど、温室効果ガスはどれくらい増えているんだろう?
C.Navi君:2000年前、日本では弥生時代と呼ばれ農耕文化が根付いた頃から現代までの大気中のCO2の増え方を見てみましょう。それまで一定だったグラフの線が1960年代以降、急に右肩あがりに跳ね上がっていくのが、よくわかりますね。経済の中心が農業から工業へ大きく変わった時代、産業革命が始まった250年くらい前の大気中のCO2の濃度280ppmから現代は400ppmに増えています。
ものしり博士:産業革命で一番の発明は蒸気機関で、炭鉱の地下水をくみ上げる揚水ポンプに最も利用されたと言われている。蒸気の力をピストンの上下運動から円運動に転換する発明によって、紡績の動力源となり、蒸気機関車が走り、工場では新しい製品が次々作られていく。20世紀に入りエネルギー源は石油に変わっていくが、人が豊かで便利な生活を求めていく中で、CO2の増加も加速していったんだね。
掘削した氷(氷床コア)から得られた温室効果ガスの大気中濃度の変化

[IPCC第6次評価報告書WG1 TS暫定訳(文部科学省及び気象庁)を基に作成]
近年の日本における大気中の二酸化炭素の月平均濃度

質問:二酸化炭素の濃度は、どこで、どんなふうに計測しているの?
C.Navi君:世界で約300地点、日本の気象庁も岩手県大船渡や南鳥島・与那国島など三地点で計測を続けています。地上では、できるだけ人間活動や植物の光合成の影響を受けないように、地上20メートルの高さで取り込んだ大気を調べたり、飛行機で上空の大気や、気象観測船で海上の大気や海水を調べて、二酸化炭素の濃度を定期的に測定しています。
ものしり博士:昔の気温を調べたのと同じように、南極やグリーンランドの氷を調べて、CO2濃度の変化がわかる。一年中溶けない雪がやがて氷になり、氷のすき間には空気が閉じ込められている。氷の層の下へ行くほど時代が古いというわけだ。だから氷の中の気泡を取出して分析すれば、昔の空気の成分を調べることができる。
C.Navi君:南極にある日本の「ドームふじ基地」では、70万年以上をカバーする3035mの深さまでの氷床コア掘削に成功した実績がありますよ!
WMO(世界気象機関)の二酸化炭素観測地点

南極のドームふじ基地

4 地球温暖化は本当に人間が引き起こしているの?
4 地球温暖化は本当に人間が引き起こしているの?
質問:産業革命は授業で習ったけど、それが原因で温暖化が進んだの?
C.Navi君:産業革命前と後で考えてみましょう。大きな違いは、新しく生まれた技術が、石炭や石油のように地面を掘って取り出す燃料(化石燃料)を燃やして得られるエネルギーを利用し、いろいろな仕組みや製品を生み出してきたことです。身近なところでは、夏の暑さ対策の団扇(うちわ)から扇風機、そしてクーラーへと、人の生活になくてはならないモノが作られてきましたね。交通手段も馬車から自動車、新幹線へと、多くの人たちが移動するのに便利で安全な乗り物が当たり前の風景になりました。でも、この化石燃料を燃やす時に出てくるCO2の量が増えてしまいました。産業革命前と後では、大気中のCO2濃度は1.5倍近くに膨らんでいます。
ものしり博士:国連IPCC※は2023年の第6次報告書で初めて、「人間の影響が大気、海洋、及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と結論づけている。人間の影響なしに発生する気候的な変動[自然起源]と、人間活動に由来する気候変動の要因[人為起源]をシミュレーションした結果、これまで見てきた実際の気温変化の観測値と合致するのは、[人為起源]と[自然起源]の両方を合わせた場合で、自然要因のみでは説明不可能となった。また、気温の上昇とCO2排出量のグラフを重ねると、その上昇変化が、ほぼ比例していることがわかるよ。
※IPCCは下段を参照
世界平均気温の変化のシミュレーション

質問:でも、地球はずっと昔氷河期だったんでしょう?いつか寒くなるのでは?
C.Navi君:現在の地球は、約250万年前に始まった氷河時代の途中で、氷河時代は、気温の低い氷期(ひょうき)と気温の高い間氷期(かんぴょうき)に分けられると言われています。過去100万年の気候変動を調べると、地球は8~9万年の期間の「氷期」と、1万年程度の期間の「間氷期」をあわせて約10万年のサイクルで繰り返しているそうです。現代は比較的温暖な間氷期で、すでに1万年が経過しているから、これから氷期に向かうのではとも考えられています。世界の気温の変化は、2万1000年前の最終氷期の頃は、現代と比べて3~5℃低かったとされています。つまり、何万年もかけて現在の気温に到達するのですが、この200年、特に20世紀後半からはその10倍も速いスピードで気温が急上昇しています。
もし大地震や大規模な台風が来るとわかったら、準備と対策を急がなければなりませんね。このまま温暖化が進んでしまったら、氷期が来るのが遅れて今後5万年くらい「氷期の始まり」は起こらないというような予測も出ています。
1850~1900年を基準とした世界平均気温の変化

[IPCC第6次評価報告書WG1 SPM暫定訳(文部科学省及び気象庁)を基に作成]
質問:ところでIPCCって何?IPCCの報告書には何が書かれているの?
C.Navi君:IPCCは Intergovernmental Panel on Climate Changeの略。日本語では「気候変動に関する政府間パネル」。1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立されて、各国政府から推薦された研究者によって得られた研究成果・知見を定期的にまとめ、国際的な気候変動政策の決定に科学的な観点からアドバイスするためのネットワークです。
ものしり博士:2022年3月時点の参加国と地域は195を数え、その科学的知見をまとめたものが評価報告書だ。一つのICPPレポートを出すまでには、世界中の政府とか、専門家にレビューしてもらう機会が設けられ、コメントを出す人も含めて、全員名前が公開される。レポート一つに約300~1000人の関係者が関わっているんだ。IPCC第3次報告書(2001年)以降、「地球温暖化の原因は人間活動である可能性が高い」→第4次「非常に高い」→題5次「極めて高い」を経て、2023年の第6次で「疑う余地がない」と断言した。
IPCCの第1次~第6次報告書

5 地球温暖化の話は納得できない・疑わしいという人もいる?
5 地球温暖化の話は納得できない・疑わしいという人もいる?
質問:地球温暖化は嘘だ、人間のせいじゃないって聞いたことがあるんだけど?
ものしり博士:温暖化は二酸化炭素のせいだとは限らない、二酸化炭素が増えても問題ないと考えている科学者もいるし、政治家や企業の中にも、温暖化について疑問視する声はある。例えば温暖化の原因を考えるとき、「太陽活動」や「火山活動」は、地球の温度に影響を与えるが、科学的に100%解明されたというわけではない。また、別のQ&Aでも取り上げた「氷期・間氷期の自然サイクル」も、次の氷期がいつやって来るのか、それはどの程度の規模のものか、わからないことが多い。そもそも未来予測するシミュレーション自体、気象データや観測データが不正確、あるいは不十分だと指摘する声もある。
ノーベル物理学賞受賞者のクラウザー博士が講演の中で話した「気候危機否定」は有名だ。「厳密な実験を行って、それで確認されない限りは、ただの空想的な理論に過ぎない」という主張で、気候危機は「世界経済と何十億もの人々の幸福を脅かす危険な科学の腐敗」などと発言している。
質問:地球温暖化を止める対策に熱心じゃない国もあるの?
ものしり博士:米国では、民主党は温暖化対策に熱心だが、共和党は経済や安全保障を犠牲にしてまでの極端な政策には反対している。
また発展途上国の中には、先進国と比べて、歴史的に温室効果ガスを排出してきた期間が短いのに、先進国と同等の対策が求められて経済発展が妨げられることに反発する国もある。同じ途上国でも、例えば海面上昇で国家消滅の危機が差し迫っている国は早急な対策を求めている一方で、例えば貧困と飢餓に打ち勝つために化石燃料の削減には踏み切れない国々もある(参考サイト:アジア経済研究所「おしえて!知りたい!途上国と社会」)。
6 21世紀中に、温暖化はどんなふうに進むんだろう?
6 21世紀中に、温暖化はどんなふうに進むんだろう?
質問:2100年までどんな予測をしているの?
C.Navi君:世界中の科学者の97%が、人間の活動によってCO2濃度は増えていて、CO2濃度上昇により地球の温度は上がっているという考えを支持しているとも言われています(参考サイト:国際連合広報センター・気候変動と国連)。国連IPCCでは、温室効果ガスの排出を大幅に減少しない限り、地球温暖化は止められないと報告しています。それは地球の温暖化は、人類が全力を尽くしてでも止めなければならないという考えにつながります。
※IPCCについては「ふしぎ2の質問4」を参照
5つのシナリオ―21世紀末に気温上昇がどうなるか

5つのシナリオでの二酸化炭素排出量

5つのシナリオでの世界平均気温の上昇

ものしりコラム●日本人が地球温暖化の研究でノーベル賞を受賞したってほんと?
ものしりコラム●日本人が地球温暖化の研究でノーベル賞を受賞したってほんと?
米国プリンストン大学の上級研究員で、現在はアメリカ国籍を取得している真鍋淑郎(まなべ・しゅくろう)博士(93)である。2021年、地球の大気についてコンピュータを用いたシミュレーションによって、二酸化炭素濃度が地球温暖化に影響するという、気候変動の予測に関する研究を世界に先駆けて開拓したことが高く評価され、ノーベル賞を受賞した。
当時まだ初期段階だったスーパーコンピュータを駆使して、「地上から数十キロまでの対流圏では高度が上がるにつれ気温が下がる一方、もっと高い成層圏では逆に気温が上がっていく」という、実際に地球を取り囲む大気の状態を再現したり、「大気中の二酸化炭素濃度が2倍になると地表付近の気温が2.36度上昇し、1/2になると2.28℃低下する」という計算を示した(1967年の論文)。
現在では、大気や海洋のデータを進化したスーパーコンピュータに入力し、大規模なシミュレーションを行うことで、高精度な予測が可能となっている。