
カーボンニュートラル(CN)って
そもそも何のこと?
1 カーボン(炭素)がニュートラル(中立)ってどういう意味?
1 カーボン(炭素)がニュートラル(中立)ってどういう意味?
質問:たくさんの科学者や企業も「脱炭素」と言ってるけど、二酸化炭素を減らすことだよね?
C.Navi君:とても大切な質問です。まず、二酸化炭素は化学式でCO2と表されます。「カーボンニュートラル」という言葉は、CO2のうちCである「カーボン(炭素)」と、ゼロ→中立の意味である「ニュートラル」という言葉を組み合わせたものです。具体的には、カーボンニュートラル(CN)は、地球上の温室効果ガス(CO2など)の排出量を、植林、森林管理などによる吸収量と等しくすることで実質ゼロにすることを意味します。言い換えると「温室効果ガス排出量をできるだけ削減し、削減できなかった温室効果ガスを吸収または除去することで、見かけ上の温室効果ガス排出量を実質ゼロに抑えること」になります。
※ここでの温室効果ガスの「排出量」「吸収量」とは、いずれも人間の活動によって引き起こされるものを指します。
ものしり博士:「脱炭素」という言葉について説明しよう。少々科学的な話になるが、炭素(化石燃料)を燃やすと、炭素(C)と酸素(O2)が結びついて二酸化炭素(CO2)が発生する。CO2は温室効果ガスで、温暖化の大きな原因になるとされている。
日本化学会は2022年に公式の見解として、「脱炭素社会」という目標を表す用語は止めるべきであると声明を発表した。それは、炭素と窒素などが結びつきアミノ酸を構成するように、炭素は生物にとって欠くことのできない物質で、また身の回りの多くの製品も炭素を含んでいて、炭素が不要と誤解する用語「脱炭素」を使用するべきではないとする主旨である。社会が求めているのはCO2の排出と吸収のバランスの取れた状態で、CO2を含めて「炭素循環が100%達成」された状態を指す「炭素循環社会」の用語を使おう、としたものである。
C.Navi君:一方で、森林破壊などに見るように、人間の手でCO2の吸収量を妨げる環境負荷は進んでいるわけですから、炭素をできる限り燃やさない(=CO2を放出しない)取り組みは、世界共通の目標とされ、多くの国が施策として重視しています。このような「炭素循環」のお話は、次回以降で、みんなで一緒に考えていきたいテーマの一つです。
炭素循環とは?
地球上における炭素の循環のこと。大気中の二酸化炭素が植物の光合成によって炭水化物になり、食物連鎖や腐敗を経て、ふたたび大気に還元するまでの過程を指す。炭素が生物体に固定される量と呼吸・分解によって大気に放出される量は釣り合っていたが、産業革命以降の化石燃料の消費にともない、大気中の二酸化炭素の量が増加を続けている。[出典:コトバンク]
カーボンニュートラルとは、CO2などの温室効果ガスの排出量を、吸収量と同じ分量にして実質ゼロにすること。2050年までに実現しようと世界各国が取り組んでいます!


質問:カーボンニュートラル(CN)が世界共通の目標になったのはいつ?
ものしり博士:地球の陸表の気温変動に限られるが、1940年代〜1970年の世界の平均気温は、一時的に寒冷化していたのである。この観測結果をもって、氷期のメカニズムは解明されないまま、多くの科学者がこのまま地球は寒冷化していくと考えていた。市民の中にも「このまま氷河期になるのでは」といった認識が生まれていた。温暖化の認識が広くいきわたるのは、1980年代後半になってからのことだ。1985年にオーストリアのフィラハで開催された地球温暖化に関する初めての世界会議(フィラハ会議)をきっかけに、CO2による地球温暖化の問題が大きくとりあげられるようになった。
(現在は、当時の一時的な寒冷化は、産業革命以来の大気汚染により地表に達する日光が遮られた「地球の暗化」による低温期であることが一因と理解されている。)
1988年に国連のIPCC「気候変動に関する政府間パネル」が設立され、また1992年にブラジルで開催された「地球サミット」を経て、「気候変動枠組条約」の参加国が年に1回集まって行う国際会議「COP」が1995年から開催されるようになった。
C.Navi君:世界における認知という意味では、2007年にノーベル平和賞を元米副大統領のアル・ゴア氏と「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が受賞しましたね!


[外務省 気候変動 日本の排出削減目標 を基に作成]

2 CNを実現するために、二酸化炭素をどうやって減らすの?
2 CNを実現するために、二酸化炭素をどうやって減らすの?
質問:CO2を減らすって大変だよね?どんな方法があるのかな?
C.Navi君:一つは大気へのCO2排出を減らすこと。二つ目は自然界のCO2を吸収する森林などを助けること。最後に、大気中のCO2を使うことではないでしょうか?
そのため、省エネや、化石燃料からCO2を排出しない再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力など)への転換など日常生活や経済活動におけるCO2の排出をできるだけ削減すること、植林や森林の保護を通じて、CO2を吸収する能力を高める取り組み、CO2を直接大気から集めて地下に貯蔵する技術の活用、さらに、人間社会になくてはならないCO2のC(炭素)を有効活用するカーボンリサイクルの取り組みなどが挙げられます。
![[二酸化炭素を地中に埋める!?CCSの秘密]はこちら▶家族で見たいCNパビリオン](https://cn-webmag.mgc.co.jp/wm/wp-content/uploads/wonder/wonder_3_2_fig1.png)
ものしり博士:2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みCOP21の「パリ協定」には、196か国が参加して、世界共通の目標が定められた。
●世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
●そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
この2015年のパリ協定以降、2023年末にアラブ首長国連邦で開催のCOP28(198か国参加)では、COP史上はじめて、地球温暖化や気候変動の原因が「化石燃料」であると明記され、「化石燃料からの脱却」で合意した。さらに「10年間に脱化石燃料の行動を加速させる」と数値つきの目標が盛り込まれた。一方で開発途上国と先進国の隔たりは大きく、当初案に「化石燃料の段階的廃止」が記載されていたものの、その後の草案からは削除された経緯も注目される。

MGCコラム●三菱ガス化学グループの気候変動への対応
MGCコラム●三菱ガス化学グループの気候変動への対応
気候変動への対応は、持続可能な社会の実現のために、地球規模での取り組みが求められる大きな課題です。カーボンニュートラル(CN)は気候変動問題の解決に向けた重要な取り組みの一つとなります。MGCは、エネルギーと気候変動問題の解決を重要課題と認識し、気候変動の緩和と気候変動への適応の両面から課題解決に取り組んでいます。2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、原料の炭素循環やエネルギー効率の向上・転換を進め、プロセスの技術革新や製品のライフサイクル全体でのGHG(温室効果ガス)排出量に配慮した設計・開発を推進し、事業を通じたエネルギー・気候変動問題解決に取り組んでいます。
(MGC 2024統合報告書より抜粋)
カーボンニュートラル達成ロードマップ

今回のWebサイトではCO2を回収・貯留する「CCS」技術の紹介と、CCSにおけるMGCの取り組みを解説しています
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